面を選ぶときに大切なポイントは、「十分な防御力」と「顔がずれないフィット感」です。
面は体の中でも最重要な、頭を守る防具です。面布団に十分な厚みがあるか確認しましょう。
仮に、判断がつかない場合は実際に面を被り、竹刀で叩いても痛くないかを確認すると良いでしょう。
正しい面のサイズを選ばなければ、剣道が上達できないどころか、身体の危険性も高まります。大きすぎる面は、稽古中に面がずれてしまい、衝撃をうまく吸収できずに痛みを感じたり、反対に小さすぎると、アゴが開けないので大きな声が出せなくなったりします。面のサイズを測るときは頭の「縦のサイズ」と「横のサイズ」の2カ所の寸法をもとに選びます。サイズを測るときは金属製のメジャーは使わず、裁縫用のやわらかいメジャーを使用してください。また、目盛や頭の横後ろ周囲を見ることが難しいため、ご自身だけで計らず、ご家族や剣道仲間など、周りの方に手伝って測ってもらってください。
あごの先端から、耳の前をとおり、そのまま自然に頭上を通って一回りしたサイズを測ってください。メジャーが食い込まない程度に、ゆるすぎてたゆんだり、ずり落ちない程度に、隙間なく顔や頭にぴったりついている状態で測ります。
額を通ってこめかみを真横に一周したライン、はち巻きをする感じで測ります。
面をつける前にあらかじめ手拭いを巻いておきます。面のつけ方の正しい手順は下記のとおりです。
1.面紐を持ちながら、面布団の両端をしっかりと広げる
2.手ぬぐいがズレ落ちないよう、面にあごから顔を入れる
3.あごは内輪の『地』の部分(面の内側にある5cmほどの幅の丸い内輪)、額は『天』の部分につける
4.面紐の結び目が、後頭部の目の後ろ頭分と頭頂部の下あたりに来るように調整して強く締める
5.面紐の長さが、結び目から約40cm程度になるように調整して、紐がねじれている場合には直す
6.耳と面布団の間を指を入れて広げ、適度に隙間を作る
購入後に面を着けてみてサイズが合っていないと感じた時は面パッドや調整布団を使用することで解決できる場合があります。調整布団とは、面のサイズが少し大きい場合に、面の内側に入れてサイズ調整する小さな布団のようなものです。成長期のお子様の成長を見越して大きめの面を使いたい場合や、打たれた時の衝撃を和らげたい場合などにも使用できます。
上記の方法は面のサイズが大きい場合の対処方法です。残念ながら面のサイズが小さい場合は、返品・交換するしかありません。またサイズが合わないといったことがないように、頭のサイズを正確に測り直しましょう。
面が新品の場合はまだ面の内輪の生地が硬くなじんでいないことがあります。そのためサイズが合っていてもごわついてしまう可能性があります。そういった場合は、面を着けて稽古をしている間に顔の形に自然となじんでいきます。
面は、使用後すぐに手ぬぐいなどで内輪や面金の汗を充分に拭き取り、陰干しし ましょう。汗がついたままになっていると、面金に傷がついている場合、ものによってはそこから錆びてしまうこともあります。また、直射日光を当てないようにしましょう。藍染めの藍も革も、日光に弱く、傷みを早めてしまいます。
特に汚れているところは、歯ブラシなどで軽くこすり、固く絞った手拭いなどで丁寧に拭き取ります。汗が乾いて塩をふいてしまうことがあるかと思いますが、そんな時は、まず霧吹きで塩がふいている周辺までしっかり濡らし、それから拭き取った方がいいでしょう。塩の部分だけを拭き取ると、そこだけ藍染めが落ちてしまう可能性があります。
次に使う時までは、風通しの良いところで保管するようにすると、カビ等の発生をを防ぐことができます。
胴を選ぶときに大切なポイントは、「自分にあったサイズを選ぶ」ことです。
小さすぎると動きづらくなり、大きすぎると余分に重く、衝撃を受け流す際に体力を消耗してしまいます。
胴台は、竹に和牛あるいは水牛の生皮を貼った革胴、紙製のファイバー胴、プラスチック系の胴などがあります。胴台はある程度華美でも大丈夫です。
胴は、胴胸(どうむね)と胴台(どうだい)に分かれています。胴胸と胴台の2つが自分にフィットするサイズの物を選びましょう。
人体において重要な心臓部のある胸を守る部分です。胴胸には雲型や曙光(しょっこう)と呼ばれる、伝統的な装飾文様が施されます。
脇に竹刀を入り込ませない役割を担っています。小柄な方には大きい小胸は窮屈となり向いていません。幼年用の胴には小胸がない場合も多いです。
打撃を受け止める腹、わきの下部分を保護します。胴の中でも最も主張が出やすい部分で、素材は竹、強化プラスチック、ファイバー製などがあります。
胴は、胴胸(どうむね)と胴台(どうだい)に分かれています。胴胸と胴台の2つが自分にフィットするサイズの物を選びましょう。
胴台のサイズを選ぶときは、
ことの2つをチェックします。
胴台のサイズを選ぶときは、
ことの2つをチェックします。
竹刀の鍔はあまり華美だと公式戦などで注意されることがありますが、胴は素材や色、質感などで装飾性を楽しむことを許されています。家紋を入れたり、最近では様々な仕上がり加工が用いられ、個性を出すことができます。
胴は他の防具に比べると、汗を吸収する部分がほとんどないため、臭い対策などはあまり気にしなくても構いません。使用後に乾拭きし、汗などを拭っておきます。胴胸が乾燥している時は、柔らかい布にミンクオイルをつけて拭くことでツヤが復活します。オイルのつけすぎには注意してください。
新品でもすぐに無数の傷ができてしまう胴ですが、研磨剤を使うことで傷を目立たなくさせることができます。車のキズ消しに使われる、「コンパウンド」の目の細かいもので胴台の気になる箇所をなでることで目立つキズを軽減させることができます。
胴紐を通す乳革(ちかわ)や、胴台と胴胸を繋げている綴革(とじかわ)は切れることが多いです。損傷してきたと感じたら自分で部品を買って修理するか、防具屋に修理を頼みます。まだ使えるんじゃないかと使い続けると、思わぬ事故につながります。
甲手・小手を選ぶときに大切なポイントは、「十分な防御力」と「竹刀の握りやすさ」です。
甲手・小手は、竹刀を握るため競技に大きく影響してくる道具です。そのため、握りやすく操作しやすいものを選ぶことが大切です。
手首が柔らかく、うごかせる親指と人差し指の間にゆとりがあるか、布団に十分な厚みがあるかなどをチェックしましょう。
甲手・小手選びで最も大切なのはフィット感です。甲手・小手は試合でのプレーに大きくかかわってくる防具です。サイズが合わないままだと、竹刀をしっかり握ることができません。またサイズが合わないまま使用を続けていると、手にまめができたり、摩擦による怪我や、甲手・小手の故障を引き起こします。
甲手・小手のサイズを選ぶときは、
の3つをチェックします。
甲手・小手のサイズ表記については、以下のようなものがあります。メーカーによって表記が異なる場合もあるので、その都度確認が必要です。
甲手・小手の布団には「手刺し」と「ミシン刺し」があります。防具の役割の中で最も重要な衝撃吸収力という点については、手刺しもミシン刺も大差はないと言えます。
「手刺し」は最初はぶ厚い布団を一針一針、職人が手で刺して何度も糸を締め直していきます。そうすると、布団が少しずつ薄くなっていくのと同時に、手刺し特有のこしの強さが出てきます。また、糸締めすることによって生地に糸が沈み込むので耐久性の高い布団になります。「ミシン刺し」はその名のとおり、ミシンで刺していく方法です。手刺しに比べ手間がかからず、安価なものが多いです。手刺しの差し幅は〇分〇厘であらわされ、 ミシン刺しの差し幅は〇ミリであらわされます。この○の数字が小さい程、刺し幅が細かく作業量が増えるので値段が上がります。例えば2分より1分5厘、6ミリより4ミリの方が刺し幅が細かくなります。
安価なもので洗濯機で洗えるタイプなどの実用的なものも存在します。付着した汗をしっかり洗うことができ、何度洗ってもへたりにくいものや、1日で乾くものも売られています。一方で、手刺しに比べ重厚感は劣ります。
仕上がりが綺麗になり、コシが出やすく、素材が良質なら使用量を減らしても衝撃吸収力が出ます。そのため軽く仕上がり、動きやすくなります。
刺し目と刺し目の間がつまるので柔らかさが出しづらくなります。細かくなるほど高度な技術と材料の入れ方が難しく、高価になります。
刺し目と刺し目の間隔が広くなるので、柔らかく身体にフィットしやすいです。使用しているうちになじむのですぐに試合にも使えるようになります。また早く製作でき、比較的安価になります。
刺し目と刺し目が広がるほど、比較的糸の締め付けが緩みやすくなり、その間の芯材が動きやすいので、へたりが早くなりやすいです。
手の内の革をしっかりと伸ばした後、外側だけでなく内側もかたく絞った手拭いなどで、汗などをしっかり拭き取ります。藍染めの藍も革も日光に弱いので、干すときには直射日光には当てず、防具を傷みから守るために陰干しするようにします。
甲手・小手は剣道防具の中で一番汗が付きやすく、また、それをふき取りにくいことによって臭いが強くなる原因となっています。きれいに拭き取った後に、こまめに消臭剤をかけて臭い対策を心がけましょう。また、洗えるタイプのものは稽古後に洗っておきましょう。
稽古の回数を重ね、幾度となく打突に耐え、汗や汚れがたまってくると、甲手・小手の各パーツが破れたり、穴が開いたりします。特に手の内(手のひらが当たる部分)は最も傷みやすい箇所です。小さな穴程度であれば、買ってきた革にまつり縫いをして直すこともできます。
垂を選ぶときに大切なポイントは、「十分な防御力」と「下腹部の安定感」です。
刺しには、手縫いとミシン縫いがありますがあまり固くなく、
適当な柔らかさがあるものをおすすめします。帯に厚みがあると、下腹部にフィットして疲れづらくなります。
垂のサイズは、S、M、Lなどと表記されていますが、同じSサイズでもメーカーによって大きさが違います。
垂のサイズを選ぶ基準としては、
を選んでください。腕をまっすぐ下に下ろしたとき、腕より少し後ろにくるくらいです。
垂を選ぶときは以下の点に注目して購入してください。
芯材が入っていることで防護性が高まり丈夫さが増し、身に型がつきやすく、見た目が美しく着装できます。
骨盤が前傾したまま安定し、下腹に力が入りやすくなるため、大きな発声や力強い打突の補助をします。
垂は主に腰から太もも前部分を保護する役割があります。胴を狙った竹刀が外れた際も、太ももや腰を守ってくれます。つくりは非常にシンプルで、大垂(おおだれ)が3枚、小垂(こだれ)が2枚、腹帯(はらおび)に虫掛け(むしかけ)で取り付けられています。垂の中央にある大垂には自身の名札を貼り付けます。
腹帯は胴が重なり擦れるため、擦れ止め革と呼ばれる補強材がついています。擦れ止め革の材料としては、藍で染めた鹿革や鹿革風の人工皮革、胴着と同じ素材の織刺があります。胴のように個性的なデザインを施すことはあまりありませんが、大垂、小垂と腹帯のつなぎ目にある山道(やまみち)という部分の色や補強材のまつり糸の色、飾り糸の色と本数で個性が出ます。
また、段飾りは二段から八段まであり、段が増えるほど高級になります。少しでも軽量化を図りたい人や、見た目をすっきりさせたい人が大垂、小垂のフチなしを選ぶ場合もあります。
垂のつけ方の正しい手順は下記のとおりです。
1.大垂、小垂が体の前に来るようにし、垂を腰にあてる
※ 腹帯が骨盤よりやや上に来るようにする
※ 大垂・小垂が太もも部分にくるようにする
2.ずれないように押さえながら垂紐を体の後ろにまわして前に持ってくる
3.3枚ある大垂の真ん中の裏側に垂紐を持ってきて、袴の腰板の上でクロスさせ、蝶結びをする
※ この時腰板の下部に垂紐が来ているとうまく締まる
基本的に、垂は面や甲手・小手と同様、綿素材でできています。そのため汗を吸い込みやすく、特に腰周りの汗汚れが激しいので、使用後は濡らした手拭いなどでよく汗を拭き取り、陰干ししておきます。
ぎゅっと固く絞った垂紐は、紐がよじれたり、しわが寄ってしまいます。垂紐がよじれたまま使用していると、その部分がこすれて切れやすくなるため、稽古後にアイロンをかけて伸ばしておくと長持ちします。せめて試合前には必ずアイロンをかけ、まっすぐにしておきましょう。
個人的な癖で垂を触ったりして皮脂が付着して、垂の色が変色したり、繰り返し洗ったりすることで藍染の色が落ちてしまいます。気になるようでしたら、洗濯後に藍染液で染め直しをしておくと良いでしょう。